=人物・用語説明=
* 今回、言説を参照する人物 *
笠原敏雄:小坂療法から出発し、ストレス・トラウマではなく患者本人の許容範囲以上の幸福が心因性症状の原因になっているという、幸福否定理論を提唱。”感情の演技”という方法で、患者を幸福への抵抗に直面させ乗り越えさせる、独自の心理療法を開発。また、日本を代表する超心理学者でもある。
グラツィエラ・マゲリーニ:イタリアの精神科医。フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ病院に運びこまれる外国人観光客の症状を記録し、スタンダール症候群と名付ける。
* 用語説明 *
反応:抵抗に直面した時に出現する一過性の症状。例えば勉強しようとすると眠くなる、頭痛がする、など。
抵抗:幸福否定理論で使う”抵抗”は通常の嫌な事に対する”抵抗”ではなく、許容範囲を超える幸福に対する抵抗という意味で使われている。
スタンダール症候群:イタリアのフィレンツェで、観光客が起こす発作的な心因性症状。芸術作品鑑賞中や歴史的な建築物などで起こす事が多い。フランスの小説家、スタンダールが同様の症状を発症したことからスタンダール症候群と名付けられる。
予定では、下記の順番で進めていこうと考えています。
芸術とは何か?という研究を2011年以来続けていた私は、芸術的行為のいくつかの条件に気が付いていました。その条件は後述しますが、そのうちの一つ、数の機能的な側面について調べるために、昨年夏以来、エジプトのピラミッドや古代遺跡の本を数多く読んでいました。
古代遺跡は、装飾が少なくシンプルな為、長さや高さ、距離など比率に関する事に注目する事が多くなります。
古代遺跡同様に、有名な龍安寺の石庭も、石と石の距離のみが提示されているだけにも関わらず、深遠な魅力があり、昔から、何かの本質を捉えているのではないか?と興味がありました。(注1)
しかし、比率などは過去に色々な人が測っただろう、また、石のどこを基準にして測ればいいのかわからない、また、そもそも実寸がわからないという事で、特に具体的に測る事を試みた事はありませんでした。
興味はあるけど、手をつけていない状態だった龍安寺の石庭ですが、昨年、『謎深き庭 龍安寺石庭: 十五の石をめぐる五十五の推理』(細野透著)が出ているのを知り、購入し読んでみたのですが、結論としては恣意的な印象があり、龍安寺の石庭の謎が解けたという印象は全くありませんでした。
しかし、思わぬ方向で、この本が重要なきっかけを与えてくれる事になります。建築&住宅ジャーナリストの細野氏は、日本で飛鳥時代から使われてきた、曲尺という道具に注目します。辺が約1:2のL字型の物差しから、龍安寺の石庭は、この物差しの比率が使われたのではないか?と、推測したのです。
(図版引用:『謎深き庭 龍安寺石庭 十五の石をめぐる五十五の推理』/細野透著p40~41)
私自身は、この図を見たときに、確かにおさまりはいいが、どの石にも沿ってないではないか、これでは数度、角度をずらしても成り立ってしまう、と思いました。龍安寺の石庭の本質を解き明かしたとは言えないと感じたのです。
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