幸福否定の研究 1・2
【幸福否定の研究とは?】
勉強するために机に向かおうとすると、掃除などの他の事をしたくなったり、娯楽に耽りたくなる。自分の進歩に関係する事は、実行することが難しく、“時間潰し”は何時間でも苦もなくできてしまう。自らを“幸福にしよう”、”進歩、成長させよう”と思う反面、“幸福”や“進歩”から遠ざける行動をとってしまう、人間の心のしくみに関する研究。心理療法家、超心理学者の笠原敏雄が提唱している。
皆さん、はじめまして。渡辺といいます。
私は静岡市内で治療院を開院している治療家で、東洋医学系の施術法を基に、筋骨格系の症状から、免疫系、内臓、精神症状まで幅広く施術をしています。治療家を始めて十年以上が経ち、(患者さんが本当に満足するかどうかはともかく)どのような症状であれ、多かれ少なかれ改善(注1)させることができるようになりました。
しかし、人格障害、統合失調症などの患者さんたちの場合は、異なっていました。皆さん、改善させることすら難しい症例ばかりなのです。
それらの治療法がなにかしら存在しないかを独自に調べていくうち、2006年ごろ、とても興味深い理論が書かれた本に出会いました。冒頭に挙げた、心理療法家の笠原敏雄による著作です。以下、特徴的な箇所を引用してみましょう。
たとえば、締め切り間際にならないと課題に手がつけられない者が、まだ時間の余裕が十分あるうちに、その課題に無理やり手をつけようとした場合を考えてみよう。
まず、さまざまな雑念が沸くなどして、その課題を始める態勢に持ってゆくこと自体が、非常に難しいであろう。机を使う仕事であれば、机の前に坐るまでに、実に長い時間がかかる。努力の末、ようやく覚悟を決めて座っても、今度は、別のことをしたい気持ちが強く沸き起こってくる。娯楽的なことをしたくなったり、片づけをしたくなったり、無関係の本や雑誌を読みたくなったり、横になりたくなったりするのである。これが“現実逃避”とか“時間つぶし” と言われる現象の本質である。
そうした逃避的誘惑を何とかこらえて、無理に課題に取りかかろうとすると、今度は反応が起こるようになる。あくびが出たり眠気が起こったりすることもあれば、頭痛や下痢や脱力などの身体症状が出ることもあるし、鼻水やかゆみや喘息などのいわゆるアレルギー症状が起こることもある。さらに抵抗が強くなると、食物やアルコールの乱用に走る者もあれば、異常行動に走る者もある。 ほとんどの場合は、そうした抵抗に耐え切れなくなり、そこまで強い反応前にやめてしまうであろう。しかし、それでも本腰を入れて強行しようとすると反応はもっと強くなる。身動きができないほど、脱力感が強くなったり、急速に眠り込んでしまったりすることもあれば、自滅的な行動に耽ったりすることも あるのである。
しかし、その努力をやめれば、そうした症状はたちどころに消える。このような症状は、自分を前向きにしようとする努力を阻止する形で起こる。これが幸福否定の現れなのである。ここではまた、締め切り-つまり、外部からの要請-がある場合の話である。では、もし締め切りというものがなく、全く自発的に自分のしたいことをしようとした場合には、容易に想像がつくように、ほぼ例外なくその課題にほとんど、あるいは全く手がつけられないまま一生を終えてしまう。
(引用:笠原敏雄 著 『なぜあの人は懲りないのか 困らないのか』 )
参考ウェブサイト:笠原敏雄『心の研究室』
■ 幸福否定の研究 2(2012/5/19)
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