「お金・相場」に関する幸福否定 10:相場における心因性症状・異常行動-5 ⑤ルールが通用しなくなる(短期的成功と長期的成功の比較)

* 用語説明 *

幸福否定理論:心理療法家の笠原敏雄先生が提唱。心因性症状は、自らの幸福や進歩を否定するためにつくられるという説。娯楽は難なくできるのに、自らの成長を伴う勉強や創造活動に取り組もうとすると、眠気、他の事をやりたくなる、だるさ、その他心因性症状が出現して進歩を妨げる。このような仕組みが特定の人ではなく人類にあまねく存在するという。

抵抗:幸福否定理論で使う”抵抗”は通常の嫌な事に対する”抵抗”ではなく、許容範囲を超える幸福、自らの成長・進歩に対する抵抗という意味で使われている。

反応:抵抗に直面した時に出現する一過性の症状。例えば勉強しようとすると眠くなる、頭痛がする、など

相場:(本稿で扱う意味)
実物・現物・直物取引ではなく、市場における価格変動によって生じる差額で利益を得ようとする投機的取引。(goo国語辞典)



*指標としての反応の使い方の違いのまとめ*

・個人の抵抗が強い領域
個人としては自分の反応を追い、抵抗がなくなった部分を意識上で理解できた部分を形にしていく。

・専門家の抵抗が強い領域
(どの分野でも)ある程度、専門性がある人の集団においては、専門家の中で、不自然に避けられている部分の反応を探る。例えば、当然検証されるべき事が、専門家の著書や論文、インターネット上で全く見当たらない、など。この場合、該当部分を専門家を相手に話をすれば、反応(あくび、眠気など)が出る事が多い。

・専門家、一般人の分け隔てなく全体的に抵抗が強い領域
専門家、一般人の区別なく全体に抵抗があるように思われる事に関しては、個別の反応の調査の積み重ねでは限界があるため、並行して、本稿においての”お金を稼ぐために莫大な時間を使うにも関わらず、多くの人がお金とは何かを知らない”など、明らかにおかしい点を抽出しながら比較検証の精度を高めていく。


前回は、”自分のやり方通りにポジションを取っても、精神的に不安定になる、やめてしまう”という異常行動、症状について検証をしました。

①最低限の知識についての勉強ができない
②自分のやり方を確立できない
③自分のやり方を確立しても、その通りに行動できない
④自分のやり方通りにポジションを取っても、精神的に不安定になる。やめてしまう。
⑤自分のやり方を確立し、その通りに行動し、成功した後、ルールが通用しなくなり資金をなくしてしまう。

今回は、⑤自分のやり方を確立し、その通りに行動し、成功した後、ルールが通用しなくなり資金をなくしてしまう。

という点について考えてみたいと思います。

この問題については、相場特有の現象というわけではなく、経営などにも当てはまると考えているので、

・短期的な成功
・長期的な成功

という観点で、それぞれの特徴を検証してみたいと思います。



■短期的な成功(部分限定的な法則性)

まず、短期的な成功の特徴について考えてみたいと思います。尚、

・勧められて株を買い、放置していたら上がっていた

など、“運”の要素が強い例は、回数を重ねると結果が平均化され、損失が出てくるので、今回は検証対象から除外します。

ある程度の勉強をした上での投資法として

・情報の遅れや、二つの銘柄の投資対象の買われすぎ、売られすぎ
の差額を取る裁定取引(サヤ取り)
・チャートパターンが機能する分野を見つける
・板の癖を見抜く
・決算(企業業績)

などを挙げる事ができます。

これらは、いわば特定の分野、特定の期間で通用する投資法になりますが、成功すれば短期間に資金が大きく増える反面、手法が通用する期間も短い為、資金管理ができていないと資金を大幅に無くしてしまう事になります。

短期売買、個別銘柄で勝ち続けるという事は、総じて非常に難しいという事が言えると思います。

また、「幸福否定理論」に基づいて考えてみると、“短期的な法則”というのは、普遍性がないという事になるので、いわば“本質から遠い”という解釈もできます。

短期的、部分的な法則性を見つけ、通用しなくなったら他の対象に移るというやり方もありますが、結局は、マーケット全体の資金の動きを把握していないと、どのセクターに資金が移ったのか?、出遅れている対象はどの銘柄か?などが理解できません。

ある程度の普遍性のある法則、マーケット全体の動き(ローテーション)を理解した上での、ある対象に特化した売買は、持続性があり、大きな利益を得る事も可能だと考えています。但し、膨大な時間を必要とするため、現実的には、それだけ時間を費やせる人は限られていると思います。



■ 長期的な成功

次に長期的な運用に成功している一般例を挙げてみたいと思います。

まず、長期運用を成功させるためには、


・現金を保有し続けるよりも投資をしたほうが良い
(不換紙幣とは何なのか?を理解する)

・株式の売買のタイミングを狙うよりも、配当再投資の複利効果のほうが成功確率が高い(代表的文献:『株式投資の未来』/ジェレミー・シーゲル著)
という二点を理解している必要があります。

その上で、

・ヘッジファンドのような専門家でも、長期で検証するとインデックス投資を上回る事は難しい
(参考文献:『敗者のゲーム』/チャールズ・エリス著
『ウォール街のランダムウォーカー』/バートン・マルキール著)

・長期的に資産を増やすには、売買タイミングよりもアセットアロケーションが重要(参考文献:『ウォール街のランダムウォーカー』/バートン・マルキール著)

筆者注:アセットアロケーション(資産配分)・・・株式、債券、コモディティ を4:4:2と決めた場合、四半期、もしくは半年ごとに、割合の上がった対象を売って、下がった対象を購入し、4:4:2を保つように再配分をする事。

という事を理解していれば

・参入障壁の高い分野の銘柄を貰い、配当を再投資し続ける

・全米株式、全世界株式のようなインデックス投資を続ける

・金(ゴールド)への投資を続ける

・(ここ数年は、金利の低下で成り立たなくなってきているが)債券投資を続ける。

などのディフェンシブな運用法で、長期的に資産を増やす事ができます。

逆に、市場の成長を上回る、アグレッシブな投資法に関しては、個人投資家のみならず、プロに関しても、個別銘柄でインデックス投資を上回るパフォーマンスを上げ続ける事は至難の技という事になります。

ここまでの知識は”実行できるか?”は別にして、ある程度勉強すれば、理解できる知識だと考える事ができると思います。

安全性の面でも、リーマンショックのような株式市場の大暴落や、ゴールドの没収リスクなど、リスクがないとは言えませんが、歴史を見ても、全て現金で持っているよりは、遥かに安全と言えると考える事ができると言えます。

以上の事については、筆者は、投資、資産運用に関する知識の入り口にしかすぎないと考えています。

インデックス投資と金(ゴールド)の分散投資でも、6%~10%程度の平均リターンが得られるので、経済的余裕という側面のみで考えると、個別銘柄の研究をやる必要がない人も多いと思います。

しかし、個別銘柄のチャートや会社四季報などで決算を見るだけでも「幸福否定理論」の反応が出るケースが多く、人によっては非常に強い眠気やだるさが出る事があります。

筆者は、この抵抗の原因の一つが“世界がどのように動いているのかを、一次資料を基に、自分自身で考える”という事に関係していると考えていますが、この点について、どのような問題と関係しているのか?を検証してと思います。



■個別銘柄の検証

個別銘柄に関しては、個人的には“資産を安全に増やす”という点から考えると、個人的には否定的な考えを持っています。

もちろん、大きな利益を出す投資家は個別銘柄を扱っている事が多いので、個別銘柄売買そのものを否定するつもりはないのですが、個々の会社の財務内容など、それ相応の勉強量が必要である事と、値動きが激しいので売買技術を習得していないと、短期間で資金を大幅に減らす事に繋がってしまいます。

そのため、当初は、積極的に個別銘柄の研究を行うつもりはありませんでした。

しかし、コロナショック時の株価の暴落の後に、二番底が来る事を想定し、インデックスファンドをゆっくり買い戻したために、ポートフォリオが非常にバランスの悪い状態になってしまい、“乗り遅れた”という理由で、仕方がないので回復が遅れているセクターや、個別銘柄のチャートでも反応が強く出る場合がある事がわかり、米国のS&P500指数の500社、日経225の225社の個別銘柄のチャートを

・チャート、値動き(いわゆる通常のキャピタルゲインを目的にした投機の勉強)
・「幸福否定理論」の反応研究

という二つの側面から研究しました。

それらの研究を踏まえ、マクロファンドの資金の動きという観点から、実践編で書いた通り、昨年の米国大統領選挙後に金融セクター、エネルギーセクターのETFを購入しました。

また、より深く“資金の動きから、世界的な流れを掴もう”と約700銘柄強の反応を調べたわけですが、その中でも特に米国の金融セクターの反応が強く、JPモルガンチェースのチャートで最も強い反応が出ました。

但し、JPモルガンチェースについては月足などの長期チャートでも反応が出ますが、15分足、30分足のチャートで最も強い反応が出ます。

この点については、まだ解明ができていないのですが、金融セクター以外に、ロッキードマーティン、ゼネラルエレクトリック、日本製鐵、日立などのチャートで比較的強い反応が出ました。

その他も食肉関係、遺伝子、ペット関係などの企業で反応が出たのですが、ここでは上の4社に絞って、共通項を考えてみたいと思います。

当初、軍事企業で反応が出るのではないか?との仮説を立てましたが、米国のボーイング社やノースロップグラマン社、日本の三菱重工などは弱い反応しか出ません。

上記の4社を調べたところ、原子力発電(第4世代原子力発電、核融合)が事業に含まれている事が共通点としてわかりました。

また、第4世代の原子力発電や、核融合の技術開発という視点で考えると、東芝や三菱重工も強い反応が出てもおかしくないのですが、それらの企業に関しては、あまり強い反応は出ません。

様々な可能性を考えて検証した結果、

・部分的な技術ではなく、全体的かつ長期の事業計画を持っている、またそれの流れがチャートに表れている企業

・(恐らく抵抗が強い分野であるため)感情的な議論しかなされず、テレビ、新聞報道などでは実態がわかりにくい業界

のチャートで反応が強いのではないか?

との推測をするようになりました。

昨年11月の米国の大統領選以後、“脱炭素”というテーマを世界が掲げ、電気自動車(EV)、再生可能エネルギーや、水素エネルギーが次世代エネルギーの柱になり、石油、石炭、ガスなどの化石燃料は廃れていく、という風潮が急に広まり始めました。

そこで、再生可能エネルギーや水素エネルギーに関連する銘柄のチャートを見たのですが、反応はほとんどありません。

報道を見る限り、時代遅れと思える原子力発電で反応が出て、水素関連で反応が出ないというのも、腑に落ちない部分があったので、より深く調べてみる事にしました。

その結果、

・二酸化炭素排出で地球が温暖化しているかという事に疑問がある。宇宙線量が関係しているという説がある。
参考文献:『気候変動とエネルギー問題』/ 深井有著
『不機嫌な太陽』/ H・スペンマルク著

・再生可能エネルギーは森林伐採や金属の掘削で、太陽光発電などは原子力発電よりも環境負荷が高いという説がある
(参考文献:『世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編』/ 安田陽著)

・水素エネルギーに関しては、水素を取り出す際に石油を使い、アンモニア燃料などにして、運ぶ際にも化石燃料を使うため、環境負荷という観点で考えても意味がない。
(参考文献:『コロナ後を襲う世界7大危機 石油・メタル・食糧・気候の危機が世界経済と人類を脅かす』/ 柴田明、他 著)

という事がわかってきました。

また、再生可能エネルギーが盛んに報道されている一方で、ほとんど報道がない、次世代原子炉の技術革新(安全性や核廃棄物リサイクル)が飛躍的に進んでおり、中国の核融合装置が稼働した(注1)、というニュースも流れました。

もちろん、パズルのピースが全て揃っているわけではなく、手に入る材料での暫定的な推測なので、違う材料が出てきたら考え方を柔軟に変える必要があります。

しかし、現在の資料を検証する限り、グリーンエネルギー(太陽光発電、水力発電、風力発電など)と水素社会は、

・グリーンエネルギーでは、人類が使用しているエネルギーを賄う事はできない
・製造過程(森林伐採、メタルの採掘など)まで含めると、地球環境に対する負荷はむしろ高い
・コストが高くて成り立たない

という点で、根本的な矛盾を抱えている、という事は言えると思います。

わかりやすい例で言うと、電気自動車は二酸化炭素を出しませんが、電気をつくる際に二酸化炭素が排出されます。また、電気自動車で有名なテスラ社は、資産の一部をビットコインで保有していますが、暗号通貨のマイニングには、小国の消費量に匹敵する電気が使われていると言われています。

テスラ社が実際に行っている事を見ていると、環境問題に関しては、全く関心がないと判断せざるを得ません。

このような現実を考えた時に、世界が”脱炭素”に向かっているのには、何か裏があるのではないか?と疑問を持つようになりました。

いくつかの要素があると思いますが、エネルギーや地球環境問題の解決にならない再生可能エネルギーを推し進める要因として、筆者は、

・サイバー攻撃に対する対応(太陽光発電はサイバー攻撃に対して強い)
・雇用問題
・資源(特に原油)の枯渇問題
・米ドル基軸通貨に対する利権争い

の可能性を推測しました。

その中でも、特に、米ドルの基軸通貨に対する利権争いという視点が重要なのではないか?と考えています。

本連載3回において、米ドルでしか原油決済ができないという世界のルール(ぺドロダラーシステム)について書きました。

該当部分を書いた時には、“脱炭素”という動きは起こっていませんでしたが、基本的には、環境問題という大義名分を起きている“脱炭素”の
世界的な動きも、

・原油、石炭、ガス、米ドル基軸通貨の利権勢力(米国共和党、イギリス)
と、
・再生可能エネルギー、米ドル基軸通貨体制の利権を弱めたい勢力(中国、EU)

という視点で考えています。

もちろん、中国、ロシアなどは米ドルの特権は崩したいが、化石燃料の利権は守りたいという矛盾を抱えているので、単純な仕組みではありません。

しかし、2021年に米国の大統領が、トランプ大統領からバイデン大統領になった後、ウクライナ情勢が悪化し、ミャンマーでクーデターが起きました。一見、ウクライナ情勢とミャンマーのクーデターは関係がないように思えますが、ウクライナはロシアの天然ガスのパイプライン、ミャンマーは中国の天然ガスのパイプラインが通っている国です。

状況からの推測になりますが、これらの国際情勢にもエネルギーの利権が絡んでいると推測しています。

また、原油、石炭、ガスなどの化石燃料が悪であり、再生可能エネルギー、水素社会が善という結論ありきで、既存のメディア報道が流れていますが、チャートで現実的な資金の流れを見てみたいと思います。


ICLN:再生可能エネルギーのETFでは、新型コロナウイルス蔓延後に資金が入り始め、バイデン政権になった2021年1月から、資金が流出。


(出所:INVESTING.COM)


URA:ウラン採掘会社のETF。昨年11月末から10年ぶりに上昇。


(出所:INVESTING.COM)

筆者注:原油会社にも資金が入っているが、コロナ後の暴落と経済活動再開においての回復という要素が強く、将来的な見通しについては調査中のため、本稿では割愛。

世界が目指す方向が、既存のマスメディアの報道通りであれば、再生可能エネルギーと水素関連が組み入れ銘柄のICLNが上昇するはずですが、実際には資金は流出し、東日本大震災における福島の原発事故以降、大幅下落していたウラン採掘会社のETFに、10年ぶりに資金が入りはじめています。

このように、現実的な資金の流れと、既存のメディアの報道に乖離が生じている事はよくある事です。筆者はテレビやネットニュースについては、事実を伝える事を最優先にしているとは思えず、情報操作や印象操作も頻繁に行っているため、情報源として信用できないと考えています。

次稿で、参考例として筆者が個人的にチャートの反応を追いかけ、推論を重ねた経緯を書いてみたいと思いますが、株価のチャートの動き(一次資料)を見て、自分自身で考えるという事が、“金銭的な利益”とは別の側面で必要性がある、という理由について書いてみたいと思います。


■権威への服従に関する二つの研究の比較

話が相場チャートの抵抗から少し逸れますが、筆者は「幸福否定理論」に基づく心理療法に関連して、“権威と服従”に関して勉強を続けてきました。

最初にこの点について、問題提起をしたのは、哲学者のハンナ・アーレントです。アウシュビッツ収容所へのユダヤ人の大量移送で処刑された、アドルフ・アイヒマンという人物がいます。

この裁判は、中継もされ、現在でも映像を見る事ができます。多くの人は大量虐殺をした凶悪犯を想像していましたが、アイヒマンは、凡庸な役人であり、ひたすら“上層部の命令に従っただけ”との弁解を繰り返します。

“自分の昇進にはおそろしく熱心だったということのほかに彼には何らの動機もなかったのだ。(中略)彼は自分のしていることがどういうことか全然わかっていなかった。(中略)
完全な無思想性ーこれは愚かさとは決して同じではないー、それが彼があの時代の最大の犯罪者の一人になる素因だったのだ。このことが<陳腐>であり、それのみか滑稽であるとしても、またいかに努力してもアイヒマンから悪魔的な底の知れなさを引出すことは不可能だとしても、これはありふれたことではない。”(引用:『イエルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告』/ハンナ・アーレント著 p221,2013,みすず書房)


裁判を傍聴していたハンナ・アーレントは、“悪の陳腐さ”という言葉を使い、思考停止と想像力の欠如がいかに恐ろしいか、また、アイヒマンは決して特別な人物ではなく、誰にでも同じ事が起こり得る可能性を指摘し、警鐘を鳴らします。

その後、心理学者のスタンレー・ミルグラムがアイヒマン実験とも呼ばれる事もある、有名な権威への服従に関する実験を行います。

この実験は、“罰が学習効果を高める実験”という設定で、被験者が学習者(役者)に正答を答えられないと電気ショックを与えるスイッチを押します。

回答者が悲鳴を上げたり、“痛くて死にそうだ”と叫んでも、権威者(先生役)が、続けるように促すと、被験者40人のうち、26人が最後まで実験者の支持に従って、発生器最大の電撃を回答者に与え続けました。

ハンナ・アーレントの指摘と、スタンレー・ミルグラムの実験は“ごく普通の人でも、権威への服従により、殺人までしてしまう”という人間の性質を暴いた例として、大きな衝撃を与えました。

一方で、“権威への服従”に関して、別の結論を導き出す資料もあります。

デーブ・グロスマンは、著書『戦争における「人殺し」の心理学』の中で、南北戦争や第二次世界大戦中の発砲率の資料を分析し、“向かいあって銃撃戦をしている状態でも、ほんの一握りの兵士しか、相手に向かって発砲をしていない”(両軍の兵士がわざと弾を外している)という事が歴史的に戦闘において、繰り返されてきた、という結論を導き出しています。

“権威からの命令”と“自分が殺されるかもしれない状況”があっても、殺人への抵抗感により発砲しない、つまり、良心を優先する、という事になります。

デーブ・グロスマンは、著書において、研究の目的の一つとして、“人間に生来備わっている同種殺しに対する強力な抵抗感と、その抵抗感を克服するために、数世紀にわたって軍が開発してきた心理的機構”を明らかにする事を挙げています。

ベトナム戦争以降、反射的な発砲、遠距離からの殺人、集団免責、プロパガンダによる社会的容認、など、良心に基づいた加害に対する抵抗感を弱める技術が開発され、時代を経るごとに心理操作の技術が巧妙になっています。

主に、メディアによる脱感作と殺人訓練(主に”B・Fスキナーが開発した”オペラント条件付け”の応用)により、第二次世界大戦までは15%~20%の兵士しか敵に向かって発砲していなかったのに対し、ベトナム戦争では90%以上が発砲するようになり、その結果、“罪悪感に苛まれる”、“反省の回避”(注2)として、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、自殺や日常生活が困難になる帰還兵が大幅に増えるという、社会問題を抱える事になります。

この点を考慮すると、

・ごく普通の人でも、権威への服従により、殺人まで犯してしまう

のではなく、

・ごく普通の人でも、自分のやっている事がはっきりと認識できていれば、権威への服従で罪を犯す事は少ない。しかし、想像力の欠如、思考停止などで認識できなければ、簡単に殺人に至る事までしてしまう

という結論のほうが妥当だと言えるでしょう。

スタンレー・ミルグラムの実験においても、実際には、被験者との距離、音声フィードバック、いくつかの促し、など様々な条件下で実験が行われており、それぞれに以下のように実験結果が違います。

*ミルグラムの実験の条件
参考:『服従の心理』/スタンレー・ミルグラム著,山形浩生訳,河出書房新社,2009)

信用性を高めるために、実験者(被験者)は学習者(役者)からの質問に答える形でこう宣言した。「電撃はかなり痛いかもしれませんが、長期的な器官損傷はありませんので」(p33)

電撃発生器
(略)
操作パネルは、水平に並んだレバースイッチ三十個で構成される。(中略)スイッチ四つずつをまとめる形で、次のことばにより表記がはっきりと書かれていた。軽い電撃、中位の電撃、強い電撃、強烈な電撃、激烈な電撃、超激烈な電撃、危険:過激な電撃、この最後の区分以降の二つは、単に✕✕✕と書かれていた。(p35)

被害者からのフィードバックループ
パイロット研究では、被害者からの音声フィードバックは使われなかった。制御パネルにある言葉とボルト数での記載だけで、被験者の服従を押しとどめるだけの圧力が生じると考えたからだ。しかし、そうではない事が証明された。学習者からの抗議がないと、パイロット研究のほとんどあらゆる被験者はことばでの表示など一切おかまいなしに、いったん命令されたら喜々としてスイッチを入れていった。(p38)


実験1:遠隔フィードバック版
被験者の声は聞こえず、壁を叩く音だけ聞こえる。
服従被験者の比率 65%。


実験2:音声フィードバック
音声による抗議を導入。被害者は隣室にいるが、その苦情が実験室の壁ごしにはっきり聞こえてくる。
服従被験者の比率 62.5%。


実験3:近接
被害者が被験者と同じ部屋で、被験者から一メートルほど離れたところにいる。
服従被験者の比率 40%


実験4:接触近接
被害者は、第三の条件に加えて次のようなちがいがある。被害者は、手が電撃プレートに置かれているときだけ電撃を受ける。150ボルト(強い電撃)まできたら、被害者はもう解放してくれと要求し、手を電撃プレートに置くのを拒否する。実験者は被験者に対して、被害者の手を無理矢理プレートに置しつけるよう命ずる。
服従者被験者の比率 30%

また、始めに被験者に、”電撃による後遺症は発生しない”という宣言をさせ、更に電流のレベルを上げる事に対し抵抗する被験者に対しては、“電撃は苦痛ではありますが、永続的な肉体への損傷はありません。ですから続けてください”(P37)という、先生役による、うながしが行われています。

戦争における発砲率の変化の研究を根拠にした推測になってしまいますが、、“後遺症が残ったり、死亡したりしても構わないから、続けてください”という悪意が直接的にわかる促しであれば、“権威への服従”の結果も違ってくる可能性があります。

筆者が普段行っている心理療法においても、自分自身のアイデンティティが危機的になっているにも関わらず、“親や世間が言う通りに生きてきた”、“自分には責任がない”という発言を、幾度となく聞かされます。

例えば、若者が“これからはグリーンエネルギーの時代だ”という世間の風潮に合わせて、地球環境のために太陽光発電に関する研究をしたい、と進路を決めて、将来行き詰まる事にならないか?逆に、話題にする事も憚られる風潮にある、次世代の原子力発電は、本当に危険なのか?などは、マスメディアの報道や、周囲の大人の言う事を聞くだけでは、わかりません。

マーケットの相場チャートや決算などを見て、一次資料から自分で考える力をつける事が、自分自身を守る事になり、将来的に、“周囲の大人の言う事を素直に生きてきたのに、なぜこのような結果になったのか?”という取返しがつかない事態を避ける事ができます。

自分で考えた上での失敗は、間違いに気が付きやすく、早目に修正する事ができますが、主体性が欠如した失敗は、失敗すら他人のせいにしてしまうので、改善させるのに非常に時間がかかります。

以上が、自分自身で考える力を身に着けるための努力が必要である理由になりますが、時代が進むにつれて、その重要性が高まってきている点について説明したいと思います。

■進歩で「幸福否定」がなくなるわけではなく、巧妙化する

本連載は、心理療法の主題である、成長、進歩に関する部分の抵抗に直面すると出現する“反応”(症状)に関する研究が出発点になっているわけですが、抵抗の力を弱める事に成功し、成長によって心因性疾患を克服しても、幸福否定は成長に伴い巧妙化するという性質がある事がわかってきました。

例を挙げると、

・庭内で暴力的であった人物が、暴力を振るわなくなった。表面的には解決したように見えたが、暴力は振るわなくなった後に暴言に変わり、その後、直接的な暴言ではなく、言葉巧みに相手を追い詰めるような発言を行っていた。
などの問題が残る場合があります。

・アルコールを大量に飲み、体調に問題を抱えていたクライアントが、アルコールをやめる事ができた。むくみなどの体調も回復し、食事にも気を遣うようになり、健康になったように見えたが、、何かのきかっけで吸った電子タバコがやめられなくなってしまった。匂いもなく、本人も電子タバコは害が少ないと思い込んでいた事、元々喫煙者ではなかたっため、傍からはわからなかった。

などの例があります。

このような症例を経験するに従って、表面から見える事象だけ見て解決したと判断してはいけない、と考えるようになっています。

むしろ、解決というのはなく、初期の状態よりは、改善はするけど、進歩を重ねるにつて、「幸福否定」が巧妙化しわかりにくくなる、という経過を辿る事のほうが多い、という結論を得ています。

これは、個人の進歩だけではなく、人類全体の進歩に当てはめてみても、同じ事が言えると思います。

全体的な流れとして、第二次世界大戦以降、

・人権の重要視
・暴力の減少
・高度な専門情報の一般化

などの点について、大幅な進歩が見られます。

その反面、人権侵害や加害の手段が巧妙化がどんどん進んでいるという現状もあります。

暴力に関しては、ベトナム戦争における兵士の心理的コントロール技術の開発、近年ではサイバー攻撃やドローンによる攻撃など、より罪悪感を生まない加害の方法が開発されています。

また、人権に関しては、世界的に人権意識が高まり、進歩しているように感じますが、その裏で、SNSを使っての行動や消費パターンの分析や、ターケティングによる誘導技術が進んでいる事が指摘できます。

いわば“罠”が増えるわけで、特に将来人類のためになると言われている、医療、遺伝子解析、環境問題、AI、宇宙関連、エネルギーなどの技術開発では、生活面で、人類を飛躍的に進歩させる可能性がある反面、悪用されるリスクも高いため、良かれと思ってやっている事が、“ベールを被った犯罪”に利用されてしまう、という事が多いにあり得る世の中になっています。

“ベールを被った犯罪”に関して、実際に筆者が仕事において、頻繁に経験している抗がん剤の例を一例挙げてみます。

*国立がん研究センターの見解

“「抗がん剤」とは
「この抗がん剤はよく効く」と書いてあれば、おそらく「これでがんが治る」と考えられるかもしれません。しかし多くの場合、そういうことはありません。抗がん剤で治療して、画像診断ではがんが非常に小さくなり、
よく効いたように感じたとしても、残念ながらまた大きくなってくることがあります。(中略)

それでも見た目には著明に効いたようにみえますので、「効いた」といわれるわけです。例えば肺がんの効果判定では、CTなどによる画像上で、50%以上の縮小を「効いた」と判断します。

(中略:下記、引用部分は、思考停止の例として挙げており、抗がん剤全てを否定しているわけではないので、抗がん剤が効くがんは、注3参照)
投与したうちの何%かで効果があり症状が和らぐというのが、前立腺がん、甲状腺がん、骨肉腫、頭頸部がん、子宮がん、肺がん、大腸がん、胃がん、胆道がん等です。効果がほとんど期待できず、がんが小さくなりもしないというがんに、脳腫瘍、黒色腫、腎がん、膵がん、肝がん等があります。”
(引用:国立がん研究センター がん情報サービス 薬物療法(化学療法),2012/11/3,閲覧)”

これらのがんは抗がん剤を投与の妥当性が疑われ、ましてや“がんが小さくなりもしない”というがんに関しても、当院に来る患者さんは抗がん剤の投与を受けています。
抗がん剤は非常に副作用が強く、寿命を縮めてしまう場合も多いようですが、上記の事実を知らされないまま、患者さんは治ると信じて抗がん剤治療を受け続けています。

目の前の患者が副作用で苦しみ、全く良くなっていないにも関わらず、抗がん剤を投与している医師は、自分が目にしている治療結果が芳しくなくても、治療の妥当性について考える事なく、“ガイドラインに沿った治療”を続ける事を優先し、同様に実際に点滴を打つ看護師は、”医師の指示に従う”事以外の事は考えません。

また、上記の国立がん研究センターの抗がん剤の説明を、“抗がん剤では小さくなりもしない”がんの部類のがんを患いながら、抗がん剤投与を受けている患者さんに自分で読むように促しても、ほとんどが抗がん剤の投与を続ける事を選択します。

このような、思考停止や想像力の欠如は、現代においても至る所で見られるのではないか、と思います。

そのような意味においても、自分が認識できる範囲外の事を考える事を放棄するのではなく、自分の認識できる範囲を広くする努力を続け、溢れる情報の中で、本質を見抜く能力を身に着ける事が、自分自身の進歩させ、長い目で見れば、人類全体の進歩にも繋がっているのではないか?と考えています。

話が少し逸れてしまいましたが、”相場チャートにおける反応”をテーマにした、筆者の研究に協力してくれている友人達が、”投資で得た収入は、
不労収入と言うけれど、普段の仕事よりも余程疲れる”と述べています。

「幸福否定理論」で言う”抵抗”に直面するから、疲れを感じるのですが、“一次資料としてのデータを読み解きながら、全体的な動きを理解する能力を高める事”こそが、経済的な利益だけではなく、人生の様々な場面において、適切な判断ができるという、範囲を広げた“長期的な成功”に通じるのではないか?と考えています。

■マーケットを観察する意義

以上、短期的な成功、長期的な成功、また経済的利益以外の側面での精神面への好影響も含めた成功について検証してきました。

どのような方法で投資、または投機をやるかは基本的には自由ですが、ヘッジファンドマネージャーは、四半期ごとに利益を出さないと、顧客に解約されてしまうため、短期的なトレンドを追いかける事を優先せざるを得ません。そのため、ある程度の財を成したら、早く引退したいと考える傾向が強いようです。

一方、長く続いてる投資家、投機家の傾向として、

・投機において自分を高めたい(感情ではなく、合理的な判断をしたい)
・投資において、本質を見極める能力を高めたい(必然的に長期になる)

という、自己を高める目的を持っている傾向があると感じています。

個人的な事になりますが、筆者は大学生時代にメディアリテラシーの講義を受講していました。毎回、新聞記事を出され、どのように読者を誘導しようとしているか?を自分で考え提出する、という講義で、社会人になってからも、非常に役に立っています。

しかし、主に、テレビ報道、新聞、専門誌におけるメディアリテラシーの能力と、マーケットの値動きから解析する情報には、質的に大きな差があります。

・資本主義の核心的な部分にあたる信用創造と通貨発行権
・第二次世界大戦以後の核心的な世界のルールにあたる、米ドル基軸通貨体制

は、既存メディアの報道ではほとんど触れられないため、核心部分を知っているか、知らないかで大きな差が出てしまいます。

この点を踏まえた上で、それぞれの国や、代表的な個別銘柄の資金の動きを追うほうが、既存のメディア報道よりも、遥に“実態”を知る事ができるはずです。



■投資における長期的な成功とは

筆者自身も、相場チャートの反応を研究し始めてから、数ある投資法、または投機法の中で、どの方法を選択しようか迷いました。

まず、画面に張り付いていなければいけないトレードは、時間的な負担、身体への負担など、他の事を犠牲にしなければいけないので、選択肢から除外しました。

安定的に資産運用をするのであれば、インデックス投資、債券、金(ゴールド)の資産配分を行いながら運用するのが、もっとも安全で技術、勉強のいらないやり方です。

個別銘柄まで調べるとなると、対象が数千にも及んでしまうので、当初はやっていなかったのですが、結果的には、代表的な銘柄に絞って、個別銘柄のチャートや決算を調べる事は、“世界がどのように動いているのか?”を自分自身で考えるための資料としては、最も質の高い情報源になりました。

また、情報に流されやすい投資家の資金の入り方(例、上記のクリーンエネルギーETF)、四半期ごとに利益を出さなければいけない機関投資家の資金の入り方、より大きな方向性を見据えた、長期の方向性を見据えた国家や金融資本の資金の入り方の違いも、まだまだ未熟ですが、少しずつ理解できるようになっています。

個別銘柄の投資に関しても、

・順張り(トレンドフォロー)・・・利益が出やすく、精神的な負担は少ない。但し、トレンド追う事に時間を費やすため、時間的な負担、体力的な負担を強いられる事と、本質的な事に辿り着かないというデメリットがある。

・逆張り・・・例えば近年の金(ゴールド)、製鉄、次世代の原子力発電など5年~10年以上廃れていた対象に、資金が入り始めた事を確認して、買い始める。
より本質的な方向性を確認でき、時間的な負担も少ないが、大多数の投資家の逆に張る事になるので、一次資料を読み解いて考え抜く力を養わないと成功しない。実際に、多くの個人投資家が”ここまで下がったから上がるだろう”という根拠のない逆張りで、損失を出している。

という特徴があります。

「幸福否定理論」で扱う反応という指標は、順張り(トレンドフォロー)には、ほとんど役に立ちません。より普遍的で根源的な方向性を探り出したり、メディアの嘘を見抜くという目的であれば、反応という指標は、限界はありますが、ある程度使える事になります。(よって、投資に使うとなると、難易度が高い逆張りになってしまいます。)

個人的には、“一次資料を読み解いて考え抜く力を養う”という事を主な目的として、投資を行えば、

・経済的な利益だけではなく、生活面の大局的な判断においても役に立つ
・他に犠牲にするものがない
・精神力,人格面の成長も促す事ができる

という利点があるため、難易度が高い“逆張り”の手法を追及したいと考えています。

順張り(トレンドフォロー)の投資家は、再生可能エネルギー、燃料個体電池、EV車などに関連している会社や、コモディティで言えば、それらに関係する銀やプラチナに投資をしていると思います。

筆者は、ウラン採掘のETFや次世代原子力発電に、リスク許容度の範囲内で資金を割り当てています。

大多数の人は、福島原発の事故を経験しながら、実際に原子力発電に投資する事については、肯定的な考えを持たないと思います。

しかし、これこそ“目で見たものでしか判断できない”、“思考停止”という状態であると考えています。

筆者は、浜岡原子力発電所で事故が起こったら、住む事ができなくなる地域に住んでいるため、原発事故の問題は、他人事ではありませんが、感情的な反対論によって、前に進めない膠着状態が最も危険だと考えています。

また、個人的な住居の事情は別にして、人類の方向性としては、太陽光、風力、水力発電は成り立つものではなく、次世代原子力発電から核融合発電に至る技術革新が本筋ではないか?と推測しています。

逆張りの具体例として、再生可能エネルギーと原子力発電を扱いましたが、世界中が水素社会を掲げ、環境大臣が“太陽光発電の義務付け”という発言までしている状況で、再生可能エネルギーや水素社会は成り立たないと判断し、次世代原子力に投資をする、という判断をする事は、(筆者の推論が合っている、合っていないは別にして)“一次資料を読み解く力”と“精神力がいる”、という事は理解していただけると思います。

もちろん、再生可能エネルギー分野での想定外での技術革新であったり、次世代原子力発電の技術開発がうまくいかない、あるいは新たなリスクが発生する、など、状況が変わった場合は考えを改めなければなりません。

また、判断が適切であったかどうかは、後になってみないとわからない問題でもあります。

再生可能エネルギーより、次世代原子力発電に投資をするという事に関する、正解、不正解ではなく、

・相場チャートやその他一次資料をもとに、自分自身で考えた結果の投資対象が、世間とは全く別の対象になりうる事

・人類の方向性を見抜いた逆張りの長期投資は、経済的な利益だけではなく、精神面でも良い影響をもたらすが、中途半端にやるとリスクが高く、難易度が高い

という側面があるという事の、一例として参考にしていただければと思います。

以上、相場における短期的成功と長期的成功に関して、経済的利益を超えた部分まで含めて、検証してみました。

■本連載のまとめ

本稿で『「お金・相場」に関する幸福否定』の本編は終了したいと思います。

連載開始をした2020年1月から、2021年5月までの間に、投資における情報量が大きく変化しました。新型コロナウイルス蔓延が大きなきかっけだと思いますが、

・世界が第二次世界大戦以降の激変期に入っている

という根本的な、変化があります。

また、相場においては動画投稿サイトに投資家やアナリストが参入し、以前は有料セミナーで聞いていたとような内容が、無料で聞けるようになり、多くの視聴者を獲得しています。

長年マーケットと関わってきたファンドマネージャーやアナリストの話は、勉強になる有益な内容も多いのですが、内容的には、老後のための資産形成を促すインデックス投資の解説や、誰もが知っている人気銘柄の順張り(トレンドフォロー)のやり方の紹介がほとんどで、長期投資や逆張りのやり方の解説は、ほとんどありません。

本連載は「幸福否定理論」と“反応”という指標の研究が出発点になっているので、勉強になる所は素直に吸収しつつ、プロが避けている対象や投資法がないか?という視点を持って、研究材料としました。

第2回、第3回で“お金の仕組みの理解”、第4回で“複利の理解”、第6回から第9回までが、“投資、投機における心因性症状や異常行動”、そして今回は“短期的成功と長期的成功”というテーマでしたが、一歩踏み込んで、投資をやる意義や、マーケットから情報を得る意義について書いてみました。

当然のことながら

・お金を増やす事

が、投資、投機の目的になりますが、

・心理的操作技術の開発が進む中、コントロールされない事、思考停止に陥らない事

が、より大きな目的となり得る事、また、その点が相場において、“抵抗が強い”原因なのではないか?という仮説を書いたつもりです。

「幸福否定が起こる」いう視点での投資、投機に関する分析は存在しないため、新しい視点、研究分野を提供できたとは思っていますが、現段階では、数名の協力者で“反応”のデータを取っている状態で、スタート地点に立ったばかり、という段階です。研究に興味のある方は、是非ご連絡頂ければと思います。

また、筆者は投資、投機を職業としているわけではないので、初歩的な誤解や間違いがある可能性があります。もし、お気づきの方がいらっしゃいましたら、ご指摘頂ければ幸いです。

以上で、本連載の本編は終了しますが、次回以降、追補編として、筆者自身が“反応”という指標を使って、どのようにマーケットを分析したか?という経緯を書いてみたいと思います。あくまで個人の反応の出方と、追いかけ方を扱っているので、どこまで一般化できるかはわかりませんが、一例として参考にして頂ければ幸いです。

(本編終了、2021年5月)



注1:

中国の核融合装置が稼働 1億5千万度「人工太陽」

新華社電によると、中国が自主開発した核融合研究装置「HL-2M」が4日、四川省成都市で初稼働した。

HL-2Mは核融合反応で生じるエネルギーを発電に利用することを目指す装置で、核工業集団西南物理研究院が開発を進めていた。1億5千万度の高温に達することが可能とされ、中国では「人工太陽」と呼ばれている。

中国は、日米欧などがフランスに建設中の「国際熱核融合実験炉(ITER)」のプロジェクトに参加しており、HL-2Mを活用して技術支援する考え。(共同)(引用:産経新聞,2020年12月7日 )


注2:
“精神的戦闘犠牲者については、これまでさまざまな研究者が過度に単純化されたーしかし広く受け入れられてきたー説を打ち出してきた。戦争による精神的外傷の原因は、主として死への恐怖だというのである。(中略)
ほかにも説明は考えられる。たとえば罪悪感などは有力な候補だ。しかし、これを平然ととりあげて論じられる人はほとんどいない。(中略)
自分に落ち度はなかったかという厳しい問い、反省という行為に直面したとき、真実から目をそむけたくなるのは当然だ。”
(引用:『戦争による「人殺し」の心理学』/ デーブ・グロスマン著 p112~115,2017 ちくま学芸文庫)



注3:
化学療法で治癒可能ながん
抗がん剤で完治する可能性のある疾患は、急性白血病、悪性リンパ腫、精巣(睾丸)腫瘍、絨毛(じゅうもう)がん等です。わが国におけるこれらのがんによる死亡者数は、1年間に15,000~16,000人です。

胃がんや肺がんの年間死亡者数は、それぞれ70,000人と50,000人ですから、それらに比べると比較的まれな疾患ということができます。また、病気の進行を遅らせることができるがんとしては、乳がん、卵巣がん、骨髄腫(こつずいしゅ)、小細胞肺がん、慢性骨髄性白血病、低悪性度リンパ腫等があります。(引用:国立がん研究センター がん情報サービス 薬物療法(化学療法),2012/11/3,閲覧)”

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