『人間性の否定と虚構の世界-3』第1部 HIVウイルスとエイズに関する疑惑①

* 用語説明 *

幸福否定理論:心理療法家の笠原敏雄先生が提唱。心因性症状は、自らの幸福や進歩を否定するためにつくられるという説。娯楽は難なくできるのに、自らの成長を伴う勉強や創造活動に取り組もうとすると、眠気、他の事をやりたくなる、だるさ、その他心因性症状が出現して進歩を妨げる。このような仕組みが特定の人ではなく人類にあまねく存在するという。

抵抗:幸福否定理論で使う”抵抗”は通常の嫌な事に対する”抵抗”ではなく、許容範囲を超える幸福、自らの成長・進歩に対する抵抗という意味で使われている。

反応:抵抗に直面した時に出現する一過性の症状。例えば勉強しようとすると眠くなる、頭痛がする、など

=HIVウイルスとエイズに関して疑問を持つようになった経緯と本稿の主旨=

私がHIVウイルスとエイズ(後天性免疫不全症候群)に関して関心を持つようになったのは、新型コロナウイルスの検査にPCR検査が妥当であるか否かを調べるために、PCR法を開発し、1993年にノーベル化学賞を受賞している、キャリー・マリス博士の著書『マリス博士の奇想天外な人生』を読んだ事がきっかけです。

HIVウイルスとエイズに関しては、論文を精査しないと事実関係はわかりませんが、当事者でない限り、専門家以外の一般人がそこまで労力を割く事はできません。

本稿では、

・事実を追求する学者、研究者は驚くほど少ない。
・一流雑誌やノーベル賞を受賞するような専門家、国家を代表する権威においても因果関係と相関関係の区別がついておらず、相関関係を恣意的に利用して政治的な意向に沿って研究を進めている。

という点に着目し、2020年以降のコロナ渦の問題にも大きく繋がる専門家の問題点に焦点を当てたいと思います。

そのため、HIVウイルスのDNAの配列などには立ち入らず、HIVウイルスとエイズに関する中心人物の発言を中心に、専門家の問題点をまとめたいと思います。


=HIVウイルスとエイズの疑惑の要点=

マリス博士は、

①HIVウイルスがエイズ(後天性免疫不全症候群)の原因であるという論文がない
②HIVウイルスがエイズ(後天性免疫不全症候群)の原因ではない

という驚くべき主張を著書の中でしています。

また、HIVウイルスを発見し、2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞したリュック・モンタニエ博士も、HIVウイルスがエイズの原因であるという証明ができていない事に関して、同意していたという内容が書いてありました。

その後、HIVウイルスとエイズに関して詳しい記述がある、ロバート・ケネディ・JR氏の『人類を裏切った男』(中)(原題:THE REAL ANTHONY FAUCHI』)や、その他の関連本を読み、HIVウイルスとエイズに関して調べるうちに、次の3点に問題点が集約される事がわかりました。

① HIVウイルスは人工ウイルスではないか?
② HIVウイルスはエイズの原因ではない
③ エイズはHIVウイルス感染の薬で発症している

①に関しては、『エイズウイルス(HIV)は生物兵器だった』/ ヤコブ・セガール、リリー・セガール著と『エイズの起源』/ ジャック・ぺパン著を読み比べました。ヤコブ・セガール氏の主張は、HIVウイルスは人工的につくられたというものであり、ジャック・ぺパン氏はHIVウイルスは、アフリカ起源であるという主張になります。

②に関しては、キャリー・マリス博士、リュック・モンタニエ博士、カリフォルニア大学バークレー校教授のピーター・デューズバーグ博士、次期保健省長官で数々のワクチン訴訟を担当した弁護士でもある、ロバート・ケネディ・JR氏などが主張しています。

③の主張に関しては、ピーター・デューズバーグ博士が代表的な人物になります。

本稿では、そもそもHIVウイルスがエイズを引き起こす原因でないのなら、①の論点は、生物兵器として成り立たないという意味で、あまり重要ではなくなり、②が成り立たないと③も成りたたない事になるため、②を中心に取り上げます。


=主要人物=

まず、主要人物を簡単に解説しておきます。

アンソニー・ファウチ博士・・・NIAID/国立アレルギー研究所所長

ロバート・ギャロ博士・・・HIVウイルスがエイズを引き起こすという主張の中心人物。(HIVウイルス発見者とされていたが、モンタニエ博士が送ったサンプルが混入されていたとの見解がある。)

リュック・モンタニエ博士・・・HIVウイルスの発見者。2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞。

キャリー・マリス博士・・・PCR法を開発し、1993年にノーベル化学賞を受賞。

ロバート・ケネディJR・・・政治家。弁護士。JFケネディの甥、ロバート・ケネディの息子。環境問題やワクチン問題の訴訟に関わる。

ピーター・デューズバーグ博士・・・がん遺伝子の分野における著名な研究者。HIVウイルスだけがエイズの原因とは言えないと主張。

=HIVウイルスがエイズの原因とされた流れと反論=

それでは、HIVウイルスがエイズの原因とされた流れを、ロバート・ケネディ・JR氏の著書である『The Real Anthony Fauci: Bill Gates, Big Pharma, and the Global War on Democracy and Public Health』(邦題:『人類を裏切った男』(中)/ 林千勝訳)から見ていきたいと思います。

尚、この本は2024年12月時点で、Amazon.comで25000以上のレビューがついており、5点満点中、平均4.8点の高評価を受けています。

林千勝氏による邦訳で出版された日本語版は、上・中・下に分かれており、

上巻・・・COVID-19によるパンデミックにおいて、イベルメクチンなどの有効な可能性がある薬の使用をアンソニー・ファウチ氏がいかに阻害したか、ビジネス、利権が優先されたか、など。

中巻・・・COVID-19によるパンデミックのような恣意的な情報操作が、80年代のHIVウイルスから行われていた。また、感染症の投薬と称して、アフリカや性的マイノリティに対して、人体実験の性質がある危険な投薬を行っていた。

下巻・・・ロックフェラー財団、ビル・ゲイツ氏、WHOなど、ウイルスが利権から軍事的な覇<権争いに使われるようになるまでの経緯。 が書かれていますが、ここではHIVウイルスとエイズの疑惑に関する部分を扱います。 ロバート・ケネディJR氏の著書には、

HIVウイルスとエイズの問題は、昨今の世界情勢に繋がっており、エイズに関する独自の仮説は、既得権益者(この場合はアンソニー・ファウチ博士)が金と権力、さらに地位や影響力を使って、不完全な理論の上に立つコンセンサスをいかに形成し、その後、反対意見を冷酷に弾圧できるかを示す例だ。ファウチ博士が中心に据える学説は、HIVだけがエイズを引き起こすというものだ。この公の正統派学説に対し、多くの思慮深い批評家たちが示す代替案は、もっともらしいが、それぞれ大きく異なる。それでも唯一、全員が一致した行為がある。ロバート・ギャロ博士がまずHIVがエイズの唯一の原因であると主張し、ファウチ博士が便乗した形だが、それ以来36年間、誰もその仮説を科学的に証明する研究を指摘できていない。ファウチ博士は自分が提案した科学的根拠の説明を頑なに拒んだ。のみならず、懐疑的な立場を表明している多くのノーベル賞受賞者など適格な評論家との議論も拒んできた。(引用:『人類を裏切った男』(中)/ p158~159 ロバート・ケネディJR 著 林千勝訳)

と書かれていますが、上記の「ロバート・ギャロ博士がまずHIVがエイズの唯一の原因であると主張し(中略)、誰もその仮説を科学的に証明する研究を指摘できていない。」という部分を検証してみたいと思います。

まず、ロバート・ギャロ博士の主要論文の要約を見てみたいと思います。以下、1984年に『サイエンス誌』に発表されたギャロ博士の論文の該当部分になります。

Frequent Detection and Isolation of Cytopathic Retroviruses (HTLV-III) from Patients with AIDS and at Risk for AIDS

Abstract

Peripheral blood lymphocytes from patients with the acquired immunodeficiency syndrome (AIDS) or with signs or symptoms that frequently precede AIDS (pre-AIDS) were grown in vitro with added T-cell growth factor and assayed for the expression and release of human T-lymphotropic retroviruses (HTLV). Retroviruses belonging to the HTLV family and collectively designated HTLV-III were isolated from a total of 48 subjects including 18 of 21 patients with pre-AIDS, three of four clinically normal mothers of juveniles with AIDS, 26 of 72 adult and juvenile patients with AIDS, and from one of 22 normal male homosexual subjects. No HTLV-III was detected in or isolated from 115 normal heterosexual subjects.(中略)These results and those reported elsewhere in this issue suggest that HTLV-III may be the primary cause of AIDS.


尚、HTLVというのは、ヒトT細胞白血病ウイルスの事で、後にHIVウイルスと呼ばれるようになったものですが、モンタニエ博士から供与されたウイルスの名前を付け替えた事がわかっています。

ギャロ博士の論文での主張は。

HIVウイルスが、

・エイズの兆候が見られる患者・・・21人中18人
・エイズを発症した少年の臨床的に正常な母親・・・4人中3人
・エイズを発症した患者・・・72人中26人

から発見され、正常な患者115人からは、1人も発見されなかったゆえに、HIVウイルスがエイズの原因である。

という内容です。

これに対し、ロバート・ケネディJR氏は、著書において「相関関係は因果関係ではない」という見出しで、

ギャロが調べた患者の血液サンプルにHIVのかすかな痕跡が見られたのは、72人のエイズ患者のうち26人でしかなく、これを知って科学者たちは愕然とした。そんな薄弱な結果が、HIVをエイズの原因だと主張する唯一の根拠だった。相関関係が因果関係にならない事は公理だ。ギャロは安易にエイズの原因を特定したが、エイズにはもっと高い頻度で、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスなど、多くのウイルスが見つかるのだ。(引用:『人類を裏切った男』(中)/ p182 ロバート・ケネディJR著 林千勝訳)


と反論しています。

また、モンタニエ博士に関しては、

1年前の1983年、リュック・モンタニエ博士も『サイエンス』誌に論文を発表した。そこでは、「エイズなどいくつかの症状と関連している可能性がある」とされていた。モンタニエは誠実な人柄で知られる聡明な科学者で、彼が検査した44人のエイズ患者のうち72%の人のリンパ球でHIVの存在を見出していた。モンタニエは、この弱い相関関係を根拠とするには、常に慎重だった。1992年には早くも、モンタニエは「HIVはエイズ発症に必要ではあるが、これを補助する要因がなければ、原因としては十分ではない。」とネイチャー誌で語っている。(中略)モンタニエのその後の発言から、エイズの原因としてHIVの関与はどのようなものかという疑念は深まっていたことがわかる。(引用:『人類を裏切った男』(中)p183)

と、言及しています。


モンタニエ博士の1983年の論文、『Isolation of a T-lymphotropic retrovirus from a patient at risk for acquired immune deficiency syndrome (AIDS)』を確認したところ、HIVウイルスはエイズを含むいくつかの症候群に関与している可能性があると述べており、エイズの原因と断定はしていませんでした。(注1)

しかし、モンタニエ博士の1994年の著書『エイズウイルスと人間の未来』(小野克彦訳)を読むと、この論文をサイエンス誌の論文審査員を務めると推測したギャロ博士に手渡した事、原稿執筆を急ぐあまり、論文の先頭に置くべき要約を書き忘れた事、要約部分はギャロ博士が代筆した事、ギャロ氏により専門分野のウイルスであるHTLVウイルスと書き換えられてしまった事が書かれています。(参考:『エイズウイルスと人間の未来』p59~60)

これでは一次資料と言えども参考にする意味がないので、モンタニエ氏の著書や、周囲の証言から、HIVウイルスとエイズに関して、どのような見解を持っていたかを推察するしかありません。

『エイズウイルスと人間の未来』という著書には、「エイズはウイルスがその原因となっている」(引用:『エイズウイルスと人間の未来』p105)と記述されています。しかし、1983年のHIVウイルス発見に関する論文に関して、

「私たちがウイルスを探したのは、その当時はエイズの前駆症状であるリンパ腺症の症例だけで、明らかにエイズの状態にある患者でウイルスの分離を試みたのはもっと後のことだった。今になって思えば、もっと培養が容易なウイルス株の分離を後回しにしたのは誤りだった。」(注2)(引用:『エイズウイルスと人間の未来』p67)

と書いています。

また、

・HIVウイルスはエイズの兆候が見られる症状の患者で、ある程度観察できるが、エイズを発症した患者に関しては、観察できる割合が減ってしまい、あらゆるエイズの症状があってもHIVウイルスが観察できない患者もいる。

・検査対象が注射鍼の使いまわしをする薬物中毒者、肛門性交をする同性愛者が多い

という点にも言及しています。

更に、

・「私たちは、エイズのあらゆる症状を示しているものの、ウイルスの痕跡すら見つからなかった複数の患者を調べてみた。(中略)何らかの病的な状態にある場合は、大量に作られた内在性ウイルスのたんぱく質が存在することによって、免疫系が弱められている可能性も否定できない。」(引用:『エイズウイルスと人間の未来』p120)

「このように考えていくと、事態はますます複雑なものであると思わずるを得ない。いったいエイズに進行させる要因は何なのだろうか?免疫反応がうまくいった場合には、生き残るウイルスはごくわずかである。それならなぜ免疫系が危機に瀕するのであろう?エイズで果たすHIVの役割は今ではそのほとんどすべてが分かっているが、この疾患の一連の出来事につきまとう数々の未知の事柄については、ヒトでそれに匹敵するほかの病気が見当たらないので、比較しようがないのである。」(引用:『エイズウイルスと人間の未来』p128)

と矛盾した記述が見られます。

以上をまとめると、

・HIVウイルスはエイズの単一の原因ではない。
・HIVウイルスとエイズは相関関係にある。
・エイズが進行すると、HIVウイルスは減ってしまう。
・HIVウイルスに感染していても、エイズに進行しない、健康なままの患者が大勢いる。
・エイズの症状が出ていても、HIVウイルスが見つからない患者も大勢いる。
・初期の頃には、麻薬中毒者や血友病患者が検査対象であった。

という事が、当時の主要な科学者の論文や著書を読むと、概ね同意事項である事がわかります。

つまり、HIVウイルスがエイズの原因であると断定するにはほど遠い状態にある事になります。

それにも関わらず、ファウチ博士とギャロ博士が、「HIVウイルスがエイズの唯一の原因であり、HIVウイルスに感染して放置すると死亡する」という政治的な色合いの濃い主張のもと、様々な政治的な決定を行っていたようです。

次回は、キャリー・マリス博士の著書から、科学者の倫理的な問題点の検証をしてみたいと思います。


=注釈=

注1:

Isolation of a T-lymphotropic retrovirus from a patient at risk for acquired immune deficiency syndrome (AIDS)

F Barré-Sinoussi, J C Chermann, F Rey, M T Nugeyre, S Chamaret, J Gruest, C Dauguet, C Axler-Blin, F Vézinet-Brun, C Rouzioux, W Rozenbaum, L Montagnier

Abstract

A retrovirus belonging to the family of recently discovered human T-cell leukemia viruses (HTLV), but clearly distinct from each previous isolate, has been isolated from a Caucasian patient with signs and symptoms that often precede the acquired immune deficiency syndrome (AIDS). This virus is a typical type-C RNA tumor virus, buds from the cell membrane, prefers magnesium for reverse transcriptase activity, and has an internal antigen (p25) similar to HTLV p24. Antibodies from serum of this patient react with proteins from viruses of the HTLV-I subgroup, but type-specific antisera to HTLV-I do not precipitate proteins of the new isolate. The virus from this patient has been transmitted into cord blood lymphocytes, and the virus produced by these cells is similar to the original isolate. From these studies it is concluded that this virus as well as the previous HTLV isolates belong to a general family of T-lymphotropic retroviruses that are horizontally transmitted in humans and may be involved in several pathological syndromes, including AIDS.

注2:ロバート・ケネディJR氏が「彼が検査した44人のエイズ患者のうち72%の人のリンパ球でHIVの存在を見出していた。」と書いていますが、正しくはエイズの前駆症状がある患者という事になります。

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