「お金・相場」に関する幸福否定 3:信用創造②

■ 銀行紙幣の何が問題か?

前回は、信用創造と言われる銀行紙幣が発行される仕組みと、その詐欺的な手法が悪影響のみではなく、今日の先進国の繁栄にも寄与しているという私見を書きました。今回は信用創造の負の部分、前稿でも触れた、

・公平性に問題がある
・戦争に直結している

という点を書きたいと思います。

* FRB16兆ドルベイルアウト(資金注入)

公平性の問題の、一例を挙げてみたいと思います。

リーマンショック後の2009年に米中央銀行(連邦準備制度、以下略称FRB)は、16兆ドルもの資金注入を行いました。このお金は、“無”から帳簿上で創り出されたものです。

この時の世界のお金の総量は60兆~70兆ドルです。世界のお金の約4分の1を、打ち出の小槌のごとく“無”から創り出すのも問題ですが、その注入先も自国のファンドやメガバンクだけではなく、他国のメガバンクにまで及んでおり、
多くの問題を含んでいます。

以下が、裁判で明らかになった資金注入先です。

(出所:米国会計監査員 GAO analysis of Federal Reserve System Data.July 21, 2011 p131 筆者編集)

“信用創造”という、“無”からお金をつくりだす方法は資本主義国家であれば使えるわけですから、各国の中央銀行がそれぞれの法律や政治判断に従って、資本注入を行う、あるいは救済を行わないなどの判断をするのが、通常の考え方でしょう。
FRBの救済を受けるという事は、FRBが資金を引き揚げれば破綻する可能性が出てきます。当然アメリカの言う事を聞かなければならなくなるというリスクが発生します。個人レベルで考えるとわかりやすいのですが、困った時にお金を借りた相手には頭が上がらなくなるのと同じです。

また、利子の返済も発生するので、アメリカが利を得るばかりで、お金を借りた国の国益にはならないはずです。

アメリカ経済が良好で、長期の不況に陥っている国がお金を借りるのであれば話はわかりますが、リーマンショックで大打撃を受けたアメリカからお金を借りるというのは、腑に落ちない話です。

親会社の経営難で子会社があおりを受けた時に、“親会社にお金を貸してもらおう”とは思わないでしょう。

なぜこのような事がおかしな事が起こるのでしょうか?

その点を検証する前に、“米ドルと他の国の通貨は違う”という“ドル基軸通貨体制”について説明したいと思います。

■ 米ドルが基軸通貨

私自身、政治経済学部を出ている事もあり、経済の問題には関心はあったのですが、“政治経済の理解は不確定要素が多すぎて不可能、予測はできない”という考えを持っていました。

そのため、アダム・スミス著の『国富論』で非常に強い反応が出ても、他の経済学や政治学の本で反応が出る文章が見当たらず、それ以上追う事ができませんでした。今考えれば、通貨という点に注目すれば、そこから先に進む事ができたのですが、当時はそのような着想を持つことは難しかったと思います。

その後、ストラテジストの高橋靖夫氏、国際関係アナリストの北野幸伯氏の著作を読んで、“基軸通貨から物事を見る”という視点を得てから、世界情勢に関する様々な現象が腑に落ちるようになってきました。
また、基軸通貨という視点から世界情勢を見ているアナリスト達が、多少の時期のずれはあるにせよ、予測が当たる事が多いという印象もあります。
・基軸通貨とは

現在、国家間の決済には米ドルが使われています。例えば日本と中国で貿易の決済を行う場合

円で米ドルを買う→米ドルで元を買う

という形で、決済が行われ、世界中の貿易がこの仕組みの中で行われています。第二次世界大戦前は、英国のポンドが基軸通貨として使われていました。

米ドルで貿易の決済が行われるという事は、世界中の国々はある程度の米ドルを手元に置いておくために、ドルを買わなければなりません。

そのため、アメリカが貿易赤字を出し続け、ドルが流出しても、世界中がドルという通貨を購入するため、アメリカに還流するから破綻しないと言われています。

私自身は、米ドルが還流するから破綻しないという解釈には懐疑的ですが、もう一つの重要な国際社会の

・原油の決済ができるのは米ドルのみ

というルールによって、米ドルは赤字を出し続けても破綻しない仕組みになっています。

わかりやすく例え話で説明します。

ソ連崩壊直後、ルーブルが破綻した時に、タバコが通貨の代わりとして使われたと言います。

このような状況の時、誰が一番得をするでしょうか?

おわかりだと思いますが、タバコ業界になります。

タバコ屋は、通貨としてのタバコを使って、いくらでも買い物ができます。

さらに、タバコ屋はタバコを仕入れなければいけませんが、タバコ会社はタバコをどんどん作ってしまえば、通貨としてのタバコも使いたい放題になります。
タバコ会社が持っている権利が通貨発行権になります。

特権を手にしたタバコ会社(A社)は、他のタバコ会社(B社、C社)に真似されないように、どのようにすれば良いかを考えました。

そして、”最も生活に必要なもの”を自分達の領域として、他の製品は他のタバコ会社にも権利を与えたほうが、長期に渡って利益を得られると考え、

・街のガソリンスタンドでは、A銘柄のタバコ以外の物をガソリン代金として使ってはいけない

というルールを、“暮らしの安定のため”という理由で徹底させます。

また、他のタバコ業者が不満を持ち、抗争になっては共倒れになってしまうので、A社は、他の銘柄のタバコ業者や暴力組織には、


・B社、C社は自社のタバコを自分の町内の通貨としてのみ使用して良い

・B社、C社の町内に他のタバコ業者や暴力組織が入ってこないように、我々が守る。

・他の町内との商取引には、我が社のタバコを買って取引すること。

という提案をし、“地域の安全を守る”という大義のもと、約束を取り付け、特権を維持し続けます。

これが、一般的に言われている“還流する仕組み(筆者注1)”です。

A社以外のタバコ業者も、他の町との商取引にはA社のタバコを使わなければならないので、A社のタバコを購入します。

自社のタバコと交換するわけですが、A社の言う事を素直に聞いていれば、B社のタバコ2本でA社のタバコ1本と交換できます。

A社の言う事を素直に聞かないC社は、自社のタバコ3本でA社のタバコ1本と交換できます。

また、A社の言う事を聞かなくても、C社の暴力組織がA社と同じように強くなれば、A社のタバコとC社のタバコの交換は1対1になるかもしれません。

これがタバコレートという事になります。

このような仕組みによって、暴力組織の強さを維持しながら、A社のタバコの価値を下げないようにします。

話を米ドルに戻します。1971年以前は、紙のお金は金(GOLD)と交換する事ができました。しかし、1971年のニクソンショックにより、金との兌換が停止され、米ドルはただの紙切れになってしまいました。アメリカは“双子の赤字”(貿易赤字、財政赤字)と言われる赤字を何十年も出し続けていますが、破綻しません。

なぜ破綻しないのか?と言うと、

上記の

A社のタバコ・・・米ドル

タバコ会社・・・FRB(米中央銀行、金融業界)

タバコ屋・・・米国政府

他の銘柄のタバコ業者・・・ユーロ、中国、ロシアなど

暴力組織・・・米軍(核兵器と世界各国の米軍基地で他を圧倒)

ガソリンをA銘柄のタバコでしか買えない仕組み・・・原油の決済が米ドルでしかできないペドロダラーシステム

他の町内との取引にA銘柄のタバコしか使えない仕組み・・・ドル基軸通貨体制


という構造になっているからです。

■ ペドロダラーシステム

ここで簡単にペドロダラーシステムを説明したいと思います。

ペドロダラーシステムとは、原油取引の決済が米ドルでしかできないシステムの事を言います。

この密約は、条文化されているわけではなく、国家が正式に発表するわけではないのですが、新聞も”原油の決済は米ドル”という前提で記事が書かれているので、信憑性があると考えています。
また、私の印象ですが、米ドル基軸通貨とペドロダラーシステムから政治経済の状況を分析している識者の予想が
当たる事が多いように感じます。ペドロダラーシステムが、どのようなシステムであると考えられているのか、いくつか引用してみます。


“アメリカの基軸通貨特権が継続できるように、石油消費国に対して、石油代金は米ドルでしか受け取らないことを
サウジアラビアが実践・継続し、また他のOPEC諸国にもルールとして守らせる。
(引用:『金(ゴールド) 新時代への架け橋 / 高橋靖夫著 p192)”

”71年に金・ドル交換を停止し(ニクソン・ショック)、変動相場制に移行した際、ドルの国際基軸通貨としての地位を維持するために、サウジアラビアに対し原油価格の引き上げを認める一方、あらゆる国が必要とする石油(ペドロ)をドルのみで取引する体制を構築してきた。(引用:『エコノミスト 2018/11/27号』 柴田明夫 文 p22)

多少の違いはありますが、識者達が同様の認識を持っている事がおわかりいただけるかと思います。では、次に、本当にこのルールが有効に機能しているのかを検証してみたいと思います。

国際関係アナリストの北野幸伯氏は、著書でイラク戦争について、当初の開戦理由の”イラクのアルカイダ支援”と”大量破壊兵器保有”が嘘であったとを示す「フセイン政権はアル・カイーダと無関係 大量破壊兵器も否定/米上院報告書」(読売新聞2006年9月9日付)を引用した上で、

“公式理由が「ウソ」だったのはわかりましたが、では本当の理由はなんなのでしょうか?
これはいろいろ理由があるのですが、ドル体制防衛も一因と考えていいようです。
ちなみにこの事実、新聞にもきちんと載っています。
たとえば2006年4月17日付けの毎日新聞。

イラクの旧フセイン政権は00年11月に石油取引をドルからユーロに転換した。国連の人道支援「石油と食料の交換」計画もユーロで実施された。米国は03年のイラク戦争後、石油取引をドルに戻した経過がある。(引用:『プーチン最後の聖戦/北野幸伯著 p112~113 強調筆者)”

と、新聞記事の引用を使いながら説明をしています。

そのような視点で、世界情勢を見たときに、アメリカが執拗に攻撃する国は、原油の決済を米ドルからユーロか中国の通貨である人民元に変えようとしたイラク、リビア、ベネズエラのような独裁国家か、ドル基軸体制を崩そうとしている、ユーロ、中国、ロシアとの代理戦争の場になってしまったウクライナ、シリアのような国に限られます。

北野氏は、シリアでデモが起きている段階の著書で、

“(前略)アメリカは、どの国をターゲットに戦争をしようとしているのでしょうか?一つ目のターゲットはシリアです。(中略)しかし、アメリカのほんとうのターゲットは、シリアではありません。イランです。(同 p278)

と書いています。

シリアは北野氏の予想通りその後内戦状態になりました。

イランとアメリカの関係も北野氏の予想通り悪化するばかりで、要所に指摘されていた基軸通貨の話が出てきます。

以下、イランと原油決済に関する新聞記事をいくつか挙げてみます。

【イランが原油代金をユーロで決済、ドル依存低下へ】ロイター、2016年2月8日07時00分
経済制裁を解除されたイランが、同国産原油の代金をユーロで決済するよう求めることが分かった。インドなどの未払い代金もユーロ建てで回収する方針。ドルへの依存低下が狙いという。

【中国、原油先物が上場 人民元建て】2018年3月26日日本経済新聞

【上海=張勇祥】中国で26日、人民元建ての原油先物が上場し、取引を開始した。2017年に世界最大の原油輸入国になった中国は、自国の需要動向を国際価格に反映することを狙う。原油取引の大半がドル建ての現状に、くさびを打ち込む思惑もある。

【イラン経済打撃 中ロ依存に傾斜へ】日本経済新聞 2018/8/30
【ドバイ=岐部秀光】11月に復活する米のイラン産原油をめぐる制裁で、イラン経済は大きな打撃を受ける。イラン経済はアラブ諸国に比べれば経済の多角化が進んでいる。それでも販売収入が歳入の半分以上を占めるなど、なお大きく原油に依存する。(中略)イランは米の制裁を気にかけない中国やロシアへの依存を強めそうだ。

中国は今年、上海で人民元建ての原油先物取引を開始した。中国は「ペトロ人民元」の育成に野心を燃やしているとされ、人民元建てでの輸入を増やすとみられる。自身が有力な原油・天然ガスの輸出国であるロシアは、イランからいったん原油を引き取り、それを第三国へ輸出する取引を提案しているもようだ。

【ウォールストリートジャーナル】By Justin Scheck and Bradley Hope
2019 年 5 月 30 日 13:49
米国の同盟諸国は、米ドルに依存しない代替システムをつくることで、国際貿易に関する米国の管理に抵抗しようとしている。その誘因となったのは、昨年、米トランプ政権が2015年に結んだイラン核合意から離脱した後、イランに対する貿易制裁措置を復活させたことだ。英国、ドイツ、フランスは、イランの銀行とのドル建て取引禁止を含むこの制裁措置を支持していない。このため、これら諸国は、自国企業がドルを使わずにイランと取引できるようにするため、システムを微調整している。

これらの国々の動きをみると、ユーロ主要国、中国、ロシア、がドル基軸通貨体制を崩そうとし、シリア、イランなどが板挟みになり非常に不安定になっている事がわかると思います。

そして、ドル基軸通貨という視点から見ているアナリスト達は2018年3月に始まった米中貿易戦争や米国とイランの対立を、当然の事ながら、米ドル基軸通貨体制の切り崩しが要因の一つと考えています。

私自身は、2018年3月に中国で実質的に人民元で原油の決済ができるようになった事が大きな要因ではないか?と推測しています。

軍事力があるユーロ、ロシア、中国などは軍事戦争にはなりませんが、イラク、リビア、ベネズエラ、イランなどペドロダラーシステムから抜け出そうとした小国は、簡単に戦争によって潰され、ウクライナ、シリアなどはペドロダラーシステムを崩そうとしているロシアとの代理戦争の場になっています。(注2)

■ 世界は何で動いているか?

以上、”信用創造”という方法を使った「通貨発行権」が、どのように戦争に直結しているか?について解説を書きました。

世界情勢は、米ドル基軸通貨体制という”特権”を通して考えると、わかりやすいという事も言えると思います。

北野幸伯氏は、もっと簡単にかみ砕いて

・お金儲け

という視点で見ると非常にわかりやすいと述べています。

では、お金儲けとはどのような事を言うのでしょうか?

私たちは、子供の頃は社会の役に立つ事でお金を得られると教育されました。

大学やビジネススクールなどでは、もう少し現実的になり、一言で言うと”搾取する事”を教えられます。

・不動産の取得(地代)
・起業
・金融業(利子)

などがそれにあたります。要は資本家になるという事です。

ここまでは一般の方でも理解できる方は多いのではないかと思います。但し、不動産や企業などは、それほど甘い世界ではありません。一時的に大儲けをしても、世の中の流れが変わるのは早く、数十年に渡って会社を維持するのは大変な事です。

ここから先は、人類史で数百年、もしかすると紀元前から行われているお金儲けの仕組みで、一般の方には、幸福否定理論で言う”抵抗”があるようで、説明をしてもなかなか定着しません。

その”お金儲け”の方法とは、

・何の価値もない紙切れや、帳簿上に書き込んだ数字を、暴力(軍事力)を背景に「通貨」に仕立てあげる事

です。

この”特権”を持っているのが、紙切れや数字を「通貨」にする事ができる”金融業”、それを守っているのが”軍事力”です。

当然、世界各国の首脳、特に独裁国家の首脳はこの事に気が付いて、何とかこの”特権”を崩し、あわよくば
我が物にしようと考えています。

上述のタバコ屋の例でいうと、ガソリンの決済と、町と町との決済を自社製のタバコで行わせる”最大の特権”を持っているA社に対して、自分の町内でしかタバコを通貨変わりに使えない、B社、C社、D社が結託してA社の”特権”を崩そうとしている状況です。

では、アメリカ政府がこのような”特権”を持っているのでしょうか?

アメリカ政府はつくられた通貨の”分配”を担うだけで、通貨発行権はありません。

通貨発行権を握っているのは、アメリカの中央銀行(FRB)や民間銀行という事になります。

これは、上述の”リーマンショック後にFRBが他国の主要銀行を含め、16兆ドルの資本注入をした”という事実を踏まえながらの推測ですが、”信用創造”でお金を創り出せる量に関しても、群を抜いているように感じます。

やはり、ここには軍事力を背景にした、アメリカの”特権”があるのではないか?と考えるのが妥当なように思います。

■ 信用創造で創られたお金はどこへ行くのか?

次に、信用創造で創られたお金はどこへ行くのか?を考えてみたいと思います。21世紀になり、新興国も著しく発展しましたが、アメリカの株式市場により多くのお金が集まる結果になっているようです。

・世界中の新興国の企業や個人が、自国の通貨不安があるため、米ドルを持ちたがる

という傾向に加え、

・アメリカにグローバル企業が集まるような構造になっていること

・アメリカの中央銀行であるFRBの信用創造の規模が大きく、直接的に金融派生商品(デリバティブ)を通じてグローバル企業に資本注入していること

・先進国の年金基金、企業、個人などの運用資金が流入すること

などが大きな要因だと推測しています。

結果として、米国の株価は2000年と比較しても約3倍、1980年と比較すると約30倍になっています。

(出所:S&P 500 INDEX:WIKIPEDIA)

対する日本は、1980年の日経平均株価は約7000円ですから、2020年現在では3~4倍にしかなっていません。しかも、日本銀行が信用創造によって、毎年何兆円もの株を買い続けて、2008年には8000円代にまで下落した株価をかさ上げして、現状を維持しているような状況です。

世界中で信用創造という方法によって大量に創られたお金が、米国の株式市場に流れるという事がわかったので、私自身もバンガード社という世界最大の運用会社で、米国株式と連動する投資信託で運用をしていましたが、昨年の秋に売却してしまい、必要な貯金以外は、”金(Gold)”で所有しています。

なぜ”金”で所有しているのか?という理由は、金融資本と軍事企業の関係を調べていた事が一つのきっかけになりました。

■ 運用会社の実態

以下、信用創造で創られたお金がどこに行くのか?を調べていた過程で、見つけた記事です。

【ブラックロックとバンガードが支配する世界-数年で運用額2250兆円に】2017年12月5日 Bloomberg

米ブラックロックと米バンガード・グループという2大資産運用会社が支配する世界を想像してみてほしい。そこでは運用資産の合計額が米国の現在の国内総生産(GDP)を上回り、ほぼ全てのヘッジファンドと政府、退職者が両社の顧客となる。

ブラックロックとバンガードは、いずれも既に世界最大の資産運用会社の一つだが、運用資産額の合計が10年もたたずに20兆ドル(約2250兆円)に達する見通しであることが、ブルームバーグ・ニュースの推計で示された。これほどの額が両社に集中すれば、資産運用業界の均衡が一変するだけでなく、2社による米大手企業の支配が強まり、市場の効率性とコーポレートガバナンス(企業統治)という2つの柱が試される状況となる可能性が高い。

【ICAN Japanese Twitter 2018年3月7日】(注3)

「核兵器にお金を貸すな」2018年のレポートによると:総額5,250億ドル(約55兆円)ものお金が核兵器製造企業に提供されていたことがわかりました(810億ドル(約8.5兆円)の増加)。このうち1,100億ドル(約11.5兆円)はブラックロック、バンガード、キャピタル・グループの3社によるものでした。

私がバンガード社のETFを購入していたのは、“信用創造”で創られたお金が米国株式市場に集まるという構造を理解したからであり、当初の目的である“資産運用”という意味では、良い結果が出ました。

しかし、幸福否定理論で言う“抵抗”を弱める作業を進める過程で、上記のような記事を幾度となく見る機会があり、“お金が増えれば良い”という目的のみで資産運用をする事に疑問を持つようになってきました。

私自身の視点の変化は、本連載の後半で詳しく書きたいと考えていますが、

・通貨発行者がいる通貨は、不公平性があり、必ず発行者が儲かるようにできている

・通貨発行者がいない通貨は、公平性があり、人類史でその機能を持っているのは“金”のみである

という“公平性”の視点を持つようになってきたのも、大きな考え方の変化の一つであると思います。

私自身は、現時点では、ビットコインや、Facebook社が開発しているLibraなどのデジタル通貨を否定的に見ています。その理由としては、デジタル通貨を“お金”として認めるかどうか?という視点ではありません。

銀行紙幣に対抗して出てきたデジタル通貨も、本質は通貨発行権という“特権”の取り合いであり、市民権を得るためには、恐らく“暴力を背景にした強制性”を伴う事になると判断しているからです。

■ 切り離された“金”はどうなったのか?

次に、前稿で、銀行紙幣と信用創造は、もともと金匠職人が、金の預かり証を過剰発行した事が起源になっているという事を書きました。では、1971年のニクソンショックで銀行紙幣と切り離された“金”は通貨ではなくなったのでしょうか?

1971年に1トロイオンス(約31.1g)、35ドルだった金は、現在、約40倍以上の1500ドル以上になっています。2000年頃と比較しても、約6倍の価格になっています。

これは、“金”の価値が上がっているからではなく、銀行紙幣である米ドルの価値が下がり続けている事を示しています。

この現象を、私自身は、権力者が“通貨”として定めた銀行紙幣よりも、

・世界中のどこでも値段が同じ

・世界中のどこでも受け取りを拒否されない

・通貨発行者がいない(公平性がある)

という特徴を持つ“金”が、より強力な通貨として“人類の同意”を伴いながら、機能し続けていると解釈しています。

次回は、信用創造ほどの強さではありませんが、やはり多くの人に抵抗があると思われる“複利”について書きたいと思います。

注1:
“還流”という用語を使うと、出て行ったものが戻るような印象があります。売ることができない米国債を買わせたり、米ドルを買わせたり、世界中の年金基金の資金などが米国株式市場に流れたりと、ある程度は還流しますが、それでもアメリカの赤字は累積を続けています。あくまでも、”軍事力を背景に、米ドルを使い続けなければいけないという強制性”が、米ドルの破綻を防いでいるのであり、還流するシステムだから破綻しないというのは、基本的には誤解を招くと考えています。

注2:
リビアやウクライナは民主化運動で政権が倒れたとの報道がありますが、多くのアナリストが、アメリカがNGOを組織し、民主化運動を組織したと指摘しています。現在の香港も、同様の指摘がなされています。

注3:
ICAN・・・International Campaign to Abolish Nuclear Weapons(核兵器廃絶国際キャンペーン)2017年、ノーベル平和賞受賞。

参考文献:
『公共貨幣』/ 山口薫 著
『金-新時代への懸け橋』/ 高橋靖夫著
『プーチン最後の聖戦』 / 北野幸伯著

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